累 9巻~10巻 感想 始まりから必ず誰かが不幸になる運命だった

松浦だるま先生の漫画「累」の9巻75話から10巻82話までの回想「夜の雨の中」について読み終わった感想を書いていく。

今回は前回と違ってもう読み終えた人用に物語の根本に関わる重要なネタバレを書くからまだ累を読んでない人はすぐに前のページに戻ってほしい。

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誘の最大の過ち=女の本能

最初、顔の交換は美人ヒキニートのような、「野心はないけど楽して金と名誉は欲しい」みたいなタイプを選べば完全に利害が一致して上手くいくんじゃないかと考えていた。

しかし過去編を読んでみると考えが変わった。

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結果論で言えば羽生田の言う通り誘が海道与と結婚したことが最大の過ちで崩壊の始まり。

それはその通りなんだけれど、「好きな人と結婚して子供を産んで家庭を持ちたい」という思いは、女としてある意味、当然の欲求でどんなに特殊な生い立ちで特別な状況下であろうとその願いは否定は絶対に出来ないのが難しいところ。
何故ならその願いは誘だけではなく淵透世も当然思うことだからだ。

しかし誘の顔ではその願いは絶対に叶わない。
誘の醜い顔では愛してくれる男なんて存在しない、内面にどんなに溢れる才能があったとしても。
そうなると他人の顔が必要となってくる訳で誘と透世のどちらか、或いは両方がその願いは叶わないことになるので与との結婚をきっかけに破綻するのは目に見えていた。

哀れな哀れな本物の透世

正直淵透世の性格と設定は誘を伝説の女優にし、累と野菊を生み出すために考えられたキャラクターであることは否定出来ないだろう。
それでも非常に魅力的。
個人的には髪の描き方もその顔が一番美しく見える描き方に思う。

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透世は家に住まわせ顔を貸してやってた大恩を売ってたはずのパートナーの女に、好きな男と勝手に結婚され、顔の交換がバレるように仕向け上手く寝取ったものの、その男には失望されクズ扱いされ材料扱いされ監禁され一番可愛い時期の赤ん坊の娘は奪われ…。

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最終的には透世は顔と声を永久交換により完全に奪われたことにより戸籍も美貌も何一つ持たない女となった。
元の家族に会っても友達に会っても淵透世だと信じてくれる人は誰もいないだろう。

与が真実を知るように仕組んだとは言え、基本的に善意の塊のような心優しい女性である透世がこんな風に、顔も、名前も、実家も、友達も、ペットも、夫の愛情も、全てを完全に奪われて死んでいったのは非常に哀れ。

顔さえ残っていれば子連れでも透世の美貌と性格なら人生なんてなんとでもなっただろうに。

こうやって感想を書いてみると改めて顔の永久交換後の透世にとって野菊は唯一の味方で希望の存在で心の拠り所でどれだけ大切な存在だったのかが伝わってくる。
その強い愛情が野菊のどす黒い復讐心に繋がるんだけども。

誰一人救われず不幸になった

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どういった経緯で誘と与が結託して透世を監禁して顔を”搾取”することになったのかはずっと疑問だったけど、読んでみたらキャラクターの行動は性格的にある意味当然と言えることばかりだった。
誰も悪意を持っておらず明確に誰かが悪いという訳ではないのに、なし崩し的に二人の子供も含めて全員が不幸になってしまった。
(勿論一番悪いのは透世を監禁した二人だが)

今回の回想が今度どんな展開に繋がっていくのかは私には分からないけど回想最終回の回は読んでいて辛かった。
この回想はバッドエンドで終わることは分かっていたけどそれでも。

それでもやっぱり面白かったから今後の展開に期待したい。


 

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